(ここから第2章)
この章では、僕がこれまでワインを飲むことで培ってきた、ワインと良き友だちになるための具体的な方法についてお話ししたいと思います。
前にも述べたとおり、この本では日本人のライフスタイルに合った、ワインの新しい飲み方を提案したいと考えています。従来の常識に反することもお勧めすることになると思いますが、すべては「ワインの民主化」を推進するための試み。「革命」にはそれなりの実験精神が必要と、心を開き、腹を据えて取りかかっていただきたいと思います。
互いに親しみが湧くようになるためには、できるだけ頻繁に会って一緒に時を過ごし、話を交わしたいものです。それは相手が人であれ、ワインであれ同じこと。理想は、毎日少しずつでもいいからワインと接するようにすることです。それがワインという飲み物の特性とも合致した方法であることは後で述べます。
まずは、どこでワインを飲むか? これについては家で飲む、すなわち「家飲み」が基本ということで行きたいと思います。家飲みにはさまざまな利点があります。自分の好きな時間に、好きなだけ、好きなスタイルで、主体的に飲めるということ。外で飲むよりも経済的で持続可能性が高いということ。酔っぱらってつぶれてしまっても、他人に迷惑をかけたりわが身に危険が及んだりしないということ(これは半分冗談)。
では、一日の生活のなかで、どの時間帯にワインを飲めばいいのか? これはもちろんその人のライフスタイルによって違ってくるでしょう。さすがに朝からワインという人はいないでしょうが、午後の時間帯でも夕食前でも夜更けでも、要はゆったりとした気分でワインと付き合える時間ならいいのです。
僕自身は夕食後にその時間を取るようにしています。
「ワインは食事とともに楽しむものじゃないのか?」
という声が聞こえてきそうです。たいていのエキスパートたちは、それがあたかも金科玉条のごとく、「ワインは本来食事とともに飲むべきものだ」と言います。僕もそれは真実だと思います。言い方を換えれば、「良いワインというのは食事をさらにおいしくするワインのことである」ということ。その通りだと思います。が、ここで僕はあえて異論を唱えたいと思います。
ワインとの語らいは食事抜きでやってはどうか?
食事とワインを合わせることをマリアージュ(結婚)といいます。このマリアージュがピタリとハマった時の食卓は本当に素晴らしいものです。しかし、よほどの感覚と経験を備えていないかぎり、毎日の食事でヒットを連発することはできません。日本の家庭でポピュラーな献立を考えても、餃子、カレーライス、煮物、キムチ、納豆、みそ汁、鍋物などプロのソムリエでも合わせるワインを選ぶのに冷や汗をかきそうな料理が並びます。おまけに数種類の総菜が一度に食卓に並ぶとしたら、「コレ一本で大丈夫」というワインを捜すのはもはや神をも畏れぬ業と言わねばなりません。ことほどさように、「ワインは食事とともに」がわれわれの手足を縛り、がんじがらめにしているのです。
ひとまず、ワインとの付き合いは食事抜きにしてはどうかと僕が提案するゆえんです。
僕自身のパターンを参考までにお話ししましょう。夕食を食べるときには、季節と料理と気分に合わせてさまざまな飲み物を楽しみます。ビールのときもあれば焼酎のお湯割りのときもあります。日本酒も大好きです。ワインももちろん頻繁に登場しますが、たいていは前日の飲み残しか過去に何度も飲んで知り尽くしているワインです。食事中に飲むワインと予期せぬ会話を楽しむこともありますが、それはあくまでも嬉しい誤算というやつです。本腰を入れてワインと付き合う時間はあくまでも別に取ります。食事が済んだら軽く歯を磨きます。これはわが友、ワインに対するマナーのつもりです。夕食の味が口に残っていると、ワインの味や香りに影響があるでしょう。歯磨きペーストは使いません。あの刺激は嗅覚・味覚を狂わせます。同じ理由で食後のデザートも避けるようにしています。お菓子の甘さで舌先が麻痺してしまっては、せっかくのワインの甘みを存分に味わうことはできません。どうしても甘い物が食べたいときは、ワインとの語らいの最後に甘口ワインとともに楽しむようにしています。これはこれでまた人生を豊かにしてくれる奥の深い世界です。

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