2009年1月29日木曜日

出会いは中目黒

 東京・中目黒の駅から歩いて2分くらいの目黒川沿いに、かつてバー目黒川という店がありました。バーという名が付いてはいましたがテーブル席が多く、ちゃんとした食事を摂ることもできたので、情報誌的な分類で言うと「ダイニング&ワインバー」ということになるでしょうか。
 15年くらい前、友人に連れて行ってもらったのをきっかけに僕はその店に出入りするようになりました。Mさんという店主は大のアメリカワイン好きで、ワインメニューの大半はナパやソノマといったカリフォルニアのワインが占めていました。僕とワインとの「運命的な出会い」は、その店でのことだったと言えると思います。
 当時住んでいた家から近かったこともあり、週に2、3回はその店に通うようになりました。最初は、友だちやガールフレンドを誘って2人で、あるいは仕事の打ち合わせにかこつけて大人数で出かけましたが、そのうちに一人でも立ち寄るようになりました。
 1990年代の前半のことです。いまから思えば、80年代に起こったカリフォルニアワインの革新の波が日本にも押し寄せていた時期だったのでしょう。オーパスワン(1978年創業)やオーボンクリマ(1982年創業)といった銘柄を口にするときの店主Mさんの態度には自分が信仰する対象の名を呼ぶときのような憧れと畏敬の念が見て取れたものです。
 一人で足繁く通うようになると、店での過ごし方にひとつのパターンができました。食事のラストオーダーがコールされる頃に店に入り、カウンター席でグラスワインを3杯ほど。閉店までの小一時間を店主とおしゃべりしながら過ごして、サッと引き上げるのです。このパターンにはいくつかの利点がありました。食事もつまみもなしでワインだけを楽しむことができる。つまり安上がりだということ。たまに、一日の仕事から解放されて気が大きくなった店主が、振る舞い酒を飲ませてくれること。とにかく、貧乏人のワイン道楽ですから、効率優先というわけです。終いには、お客の飲み残しをこっそり飲ませてくれたり、本来は捨てるはずのチーズの切れ端を出してくれたりしました。いま思い出すと、ちょっと屈辱的な気がしないでもないですが、それも気にならないくらい当時はワインのことを知っていく歓びが大きかったのです。

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